「内視鏡検査はどこまで楽にできるか?」 その3 大腸内視鏡検査について

2025.09.22

当院で大腸の内視鏡検査をもっと気軽に受けて頂きたい。そのためにはいくつかの工夫が必要と考えました。

 

まずは前処置について。当院では従来前日に検査食を食べて頂いていましたが、美味しくないと不評でした。このため便秘の方以外には前日の食事制限は夕食のみとして、朝昼には普通食を食べて頂くことにしました。その後寝る前に液体の下剤を10ml飲み、翌朝来院後に腸管洗浄液を2L飲んで頂きます。この2Lがまずい、これを飲むのがお辛いという方にはご自分の好きな飲み物をペットボトルで持参して頂き錠剤の腸管洗浄剤を飲むという方法も用意しています。

 

次に検査自体を楽に行うための工夫です。大腸検査中に苦痛を感じる原因は2つあり、それは腸が伸ばされるときの痛みとガスがたまるためのお腹の張りです。当院では無理に腸を伸ばすことなくアコーディオンのように腸をたたみながら挿入する軸保持短縮法を基本挿入法としており、この方法では麻酔なしでも全く苦痛がなく短時間で盲腸まで挿入が可能です。やや難易度の高い挿入法ですがそれを助けてくれるのが写真の透明フードです。先端にこのフードがあるおかげで内視鏡と腸の間にわずかな隙間ができるため、無駄に送気しなくても進行方向がわかりやすくなります。さらに送気を空気ではなく吸収の早い炭酸ガスにすることでお腹の張りをほぼ無くすことが可能になりました。
痩せた高齢女性などでは、大腸が長くてどうしても一時的に腸を伸ばさないと奥に進めない方が一部にいらっしゃいます。このような場合当院では細く柔らかい内視鏡を用いることと麻酔薬のプロポフォールを注射することで苦痛を確実にとるよう心がけています。この麻酔薬は効き目が早くまた切れも早いため1時間の休憩の後ご自分で自動車を運転して帰ることが可能です。

 

最後にコールドスネアポリペクトミーについて。従来大腸ポリープを内視鏡的に切除する際にはスネアという金属の輪っかでポリープを縛り、高周波で通電しながら切る方法を行ってきましたが、最近は高周波を使わずにスネアでそのまま粘膜だけを剥ぎ取るコールドスネアポリペクトミーが普及してきました。この方法では粘膜下組織のダメージが少ないため後で出血や穿孔といった合併症を起こす可能性が低いというメリットがあります。バイアスピリンなどの抗血小板薬などを内服中の方でも小さなポリープであればそのまま切除が可能で、やや大きめのポリープでも後でクリップ止血を追加することで安全に切除が可能です。

 

これまで大腸内視鏡検査に携わり30年以上、数万例の検査を経験してきました。これが今の当院のベストの方法と考えておりますが、今後さらに改良を重ねていくつもりです。

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