私の大好きな漢方薬シリーズ2 五苓散
2025.10.06
五苓散(ごれいさん)は体内の水分バランスを整えるお薬です。西洋薬の利尿薬は腎臓に働いて体から尿を絞り出すのに対して、五苓散は細胞膜の水チャンネル(アクアポリン)に働いて水が多い時には利尿を、脱水の時には逆に尿を減らす作用があります。

五苓散が役に立つ場面は臨床では本当にたくさんあります。感染性胃腸炎のときには吐き気と下痢の両方に効果があり、特に小児では通常の2倍量を肛門から経腸投与するととてもよく効きます。小児科の先生の中には五苓散の座薬を自作して使っている方もいるほどです。
内耳性のめまいにも1回2包の頓服が有効です。飛行機が降下するときの耳の痛みには着陸30分前の五苓散2包が効きます。また乗り物酔いの予防効果もあります。
頭痛に使う漢方薬はいくつもありますが、天気が悪くなると頭が痛くなるという症状には五苓散がマッチします。このタイプの頭痛は気圧の変化によりわずかに脳が浮腫むことで起こると考えられます。
そして何と言っても二日酔いの朝にこれほど頼りになる薬は他にありません。お酒を飲んだ翌朝、身体は脱水で喉が渇いてたくさん水を飲みたくなりますが、腸の中はお水でチャポチャポの場合が多いです。そのままだと下痢してしまうような時に五苓散を2包飲んでおけば、ドンドンと腸から水が吸収され下痢することなく速やかに脱水が改善して二日酔いが治ります。
このために私の診察室の机の中にはいつも五苓散がスタンバイしています。
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