「肝機能異常=肝臓の病気」とは限らない?健診結果の正しい見方
2026.07.29
健康診断で「肝機能異常。要精密検査。」と書かれていたら、誰でも不安になるものです。先日も、40代の男性が健診結果を持って来院されました。ASTとALTが基準値を超えており、「肝臓が悪いのでしょうか……」と、とても心配そうな表情です。

まずはお酒について伺いました。お酒は嗜む程度で、大酒家というほどではありません。(お酒だけが原因ではなさそうだな……)次に考えたのは脂肪肝でした。ところが体重は、昨年より2kg減っています。「何かダイエットでもされたんですか?」そうお聞きすると、「実は最近、本格的に筋トレを始めて……」その一言で、診断の優先順位が大きく入れ替わりました。
「肝機能異常」の陰に隠れた筋肉の影響
「健診の前日、ジムで運動しましたか?」「はい。かなり追い込みました。」実は、この一言が診断の大きな手がかりになりました。ASTやALTは「肝機能の数値」として知られていますが、実は筋肉にも多く含まれている酵素です。激しい筋力トレーニングをすると筋肉の細胞が傷つき、ASTやALTが一時的に血液中で高くなります。肝臓自体に異常がなくても、「肝機能異常」と判定されることがあるのです。
そんなとき参考になるのが、CK(クレアチンキナーゼ)という筋肉由来の酵素です。筋肉が原因であれば、CKも一緒に高くなることが多く、筋肉が原因なのか、肝臓が原因なのかを見分ける手がかりになります。もちろん「筋トレのせいだ」と自分で決めつけるのは禁物です。今回のケースでも、体重減少については他の病気が隠れていないか、診察や追加の検査でしっかり確認しています。
数字だけで判断せず、生活背景を含めて相談を
脂肪肝やB型・C型肝炎、薬剤による肝障害など、本当に肝臓の病気が隠れていることもあります。だからこそ大切なのは、検査結果の「数字だけ」を見るのではなく、その人の「生活や背景」まで含めて考えることです。運動習慣、お酒、仕事、服用している薬――そうした背景まで見えて初めて、検査結果の本当の意味がわかります。筋トレを習慣にしている方で軽度の異常であれば、数日から1週間ほど激しい運動を控えて再検査するだけで、原因がはっきりすることも少なくありません。「肝機能異常」と書かれていても、慌てる必要はありません。
一方で、「どうせ筋トレのせいだろう」と放置するのも危険です。気になる結果が出たときは、その数字の背景まで一緒に考えてくれる医師に、ぜひ相談してください。
※本コラムは、実際の診療で経験することの多いケースをもとに、個人が特定されないよう内容を再構成したものです。
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