AIが医療にもたらす変化とは?
2026.03.16
AIは日常診療に欠かせない存在に
長野市は梅の花が咲き始め、あちこちに春の訪れを感じられる季節になりました。さて、今回はAI(人工知能)についての話題です。
AI(人工知能)の進化はどこまで行ってしまうのでしょうか? 私のような内科医が、これまで積み重ねてきた臨床の経験や専門知識をその質と量においてすでにAIが凌駕していることは間違いのない事実であり、すでにAIは日常診療に欠かせないパートナーになりつつあります。
実際に診断に迷うケースをAIに相談すると、必要な検査や鑑別診断、治療方針まで瞬時に的確な答えが返ってきます。そして患者さんへの病状や治療方針の説明用の見やすくわかりやすいスライドをほんの数分で作成してくれます。それがなんとポケットにあるスマホ1つで全て出来てしまうのです。
医師は自分の専門以外の知識に自信がない時、これまではその専門家に相談することが普通でしたが、これからはまず“AI先生”に助言を求める時代になったと言えるでしょう。また患者さんもAIを使って自己診断してから受診することが増えて、内科医には受難の時代になったのかもしれません。

人間でなければできない領域
それでは外科医は安泰かと言うと、どうもそうでもないようです。現在、「ダヴィンチ」という手術用ロボットが急速に普及していますが、米国ではなんとその手術技術をAIにどんどん学習させているそうです。「神の手」と呼ばれる手術の名人の技術が、近い将来にAIによって世界中のどこでも再現できる時代がやってくるかもしれません。
将棋の世界では、2017年に当時の名人であった佐藤天彦九段がAIソフトに敗れたことで、AIが人間を上回る時代が明確になりました。しかし、そのことで人間同士の将棋の価値が失われたかと言えば、決してそうではありません。むしろAIは、人間がより強くなるための研究ツールへと進化しました。
藤井聡太六冠をはじめとするトップ棋士たちは、AIを活用しながら日々研鑽を積んでいます。また観戦する側にとっても、AIによる形勢判断が示されることで、将棋はより親しみやすいものとなりました。
私たち医療の世界においても、AIは仕事を奪うライバルではなく、これからは私たちを支える強力なパートナーになっていくと思われます。とりわけ人口減少と高齢化が進む我が国において、AIは欠かすことのできない重要な存在になるでしょう。
AIという最強の副操縦士を得た我々医師にとって、これからの診療では人間でなければできない領域に集中していくことになります。それはAIにはできない五感を用いた身体診察や、患者さんの言葉の行間を読む問診、患者さんの生活や価値観を聞いてその方に適した治療計画をカスタマイズすること、難病や末期がんなどの治せない患者さんへの心理的サポートや癒しなどです。
「病気を見ずして病人を見よ」、これは東京慈恵会医科大学創設者の高木兼寛先生の言葉です。高木先生もまさかこんな時代が来るとは想像もしなかったことでしょう。現代においては、AIが病気を見て医師が病人を見る、そんな時代がやってきたように私は思います。
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