リバスチグミン(パッチ剤)の低用量使用で、 認知症が劇的に改善した理由とは?
2026.04.27
少量のリバスチグミンで、認知症が劇的に改善した理由
こんにちは、院長の清水です。
一般的なアルツハイマー型認知症の治療薬には4種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。今回は、その中で唯一の貼り薬である「イクセロンパッチ(リバスチグミン)」をごく少量使用したことで、症状が劇的に改善した症例をご紹介します。
半年前の入院を境に、夜間の精神症状が悪化
患者さんは80代の男性です。もともと心不全で他院に通院されていましたが、半年前の新型コロナ感染による肺炎入院をきっかけに、認知症の症状が目立つようになりました。
当院受診時の検査では、頭部CTでの海馬(記憶を司る部位)の萎縮はごく軽度。認知機能テスト(長谷川式)も21点と、認知機能そのものの低下は「軽度」でした。
しかし問題は「周辺症状」にありました。日中はコタツでうとうと寝て過ごす一方、夜になると一変。妄想や幻覚、独語が激しくなり、大声を出したり、突然「友人の葬式に行く」と騒ぎ出したりするため、ご家族は心身ともに疲れ果てておられました。
原因は「脳の覚醒不足」と「血流低下」
私はこの方の血圧が104/68mmHgと低めであることに注目しました。心不全の状態や治療薬の影響で、夜間に脳への血流が十分に保てず、一時的な意識障害である「せん妄」を起こしているのではないかと考えたのです。
この方にはリバスチグミンをあえて規定の最小量(4.5mg)よりもさらに少ない2.25mg(パッチを半分にカット)と、漢方薬の抑肝散1包を処方しました。
開始したその晩から、嘘のように症状が消失
2週間後の外来で、ご家族は驚きの表情で次のように語っていました。
「薬を始めたその日の夜から、今までの騒ぎが嘘のように静かになりました。幻覚も消え、トイレの場所も間違えなくなりました」
まさに劇的な変化でした。ではなぜリバスチグミンがこれほど効いたのでしょうか?
リバスチグミンは、脳内の神経伝達物質「アセチルコリン」を増やし、脳を活性化させる「興奮系」の薬です。4種類ある認知症薬の中でも、リバスチグミンには「脳の覚醒(目覚め)を促す力が非常に強い」という特徴があります。
今回の患者さんのように、
1. 意識がぼんやりしている(覚醒が悪い)
2. 入院や感染症などをきっかけに「せん妄」が出ている
3. 低血圧などで脳の活動が低下している
といったケースでは、この「覚醒効果」がピンポイントで効果を発揮します。
「適量」を見極めることの重要性
ここで最も重要なのが「量」の加減です。
リバスチグミンはときに少量で劇的に効く方(超レスポンダー)がいますが、その場合に規定通りの量(9mg〜18mg)を投与すると、必ず副作用で逆効果になります。
リバスチグミンの副作用にはイライラや興奮が悪化したり、歩行が不安定になったり、心臓への悪影響があります。
特に小柄な高齢者や心疾患がある方の場合は、ガイドラインの量に縛られず、「ごく少量から始め、効いたらそれ以上は増やさない」が治療のコツです。当院では4.5mgや9mgのパッチをさらにカットして、その方に最適な「オーダーメイドの量」を探るコウノメソッドの手法を基本としています。
おわりに
認知症の薬は、ただ増やせば良いというものではありません。
イクセロンパッチは、単なる「貼り薬版のアリセプト」ではなく、独自の性格を持った薬です。患者さんの体格、持病、症状を細かく分析し、最適な「適量」を導き出すことで、ご本人とご家族に笑顔を取り戻すことができます。
「規定量を飲んでいるけれど、ちっとも良くならない」
「薬を飲んでからかえって怒りっぽくなった」
といったお悩みがあれば、ぜひ一度当院へご相談ください。

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