コップ1杯の水で完治した食道炎の原因とは?

内視鏡検査

2026.04.30

内視鏡検査(胃カメラ)を行っていると、時に驚くような光景に出会うことがあります。先日経験したのは、80代の男性患者さんのケースです。
食道を観察すると、粘膜の表面が広範囲にわたってヒラヒラと薄く剥がれていました。医学的には「食道粘膜剥離」と呼ばれる状態です。一見すると痛々しい画像ですが、意外にもご本人には胸の痛みも違和感も全くありませんでした。

白く見える部分が剥がれた粘膜です。

 

なぜ、無症状のまま食道が荒れてしまったのか

原因はこの患者さんが飲まれていた「お薬の種類」と「飲み方」にありました。
この方は、心臓や腎臓の持病のために10種類以上のお薬を内服されていました。その中には、血液をサラサラにする「エリキュース」が含まれていました。これは脳塞栓症を予防する非常に重要なお薬ですが、食道の粘膜にとっては、直接触れ続けると刺激が強いという側面があります。
さらに、この方は大量のお薬を「コップ半分ほどの少量の水」でまとめて飲まれていました。
高齢になると食道の送り出す力が少しずつ弱くなります。そこへ十分な水がないまま多量のお薬を流し込むと、お薬が胃まで届かずに食道に長時間とどまってしまいます。その結果、お薬が粘膜に直接当たり続け、化学的な刺激によって表面が剥がれてしまったのです。

 

治療は「お薬」ではなく「コップ1杯の水」

私はお薬を一切変えず、ただ一つ、飲み方だけを変えていただきました。
「お薬を飲むときは、必ずコップ1杯(約200ml)の水で飲んでください」
6ヶ月後、再び内視鏡で確認すると、あれほど剥がれていた食道は跡形もなく消え、驚くほど綺麗な粘膜に戻っていました。特別な治療薬を追加しなくても、水の量を増やすだけで、食道は自らの力で治ったのです。

 

安全にお薬を続けていただくために

このケースからは、お薬は副作用の注意だけでなく、「しっかり胃へ送り届ける」ということがいかに大切かということがわかります。
• お薬はたっぷりの水で飲むこと(コップ1杯が目安です)
• 飲んだ後、すぐに横にならないこと(食道への逆流を防ぎます)
特に、たくさんのお薬を飲まれている方は注意が必要です。もし「飲み込みにくい」などお薬についてのお悩みがある場合は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。

コラム執筆

更水医院院長 清水慎介

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