私の大好きな漢方薬シリーズ17苓桂朮甘湯

漢方薬

2026.09.04

〜朝起きられない中高生の「めまい・立ちくらみ」に〜

「朝、なかなか起きられない」 「午前中は体が重くて動けない」 「なのに午後から夕方になると元気になる」当院でも、こうした症状に悩む中高生やご家族から相談を受けることがあります。

 

その背景にある病気のひとつが、「起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)」です。ODは「根性がない」「怠けている」という問題ではありません。自律神経による血圧や心拍数の調節がうまくいかず、立ちくらみ、めまい、頭痛、倦怠感、動悸、そして「朝起きられない」といった症状が現れる病気です。

 

今回は、そんなODの診療でよく使われる漢方薬、「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」についてお話しします。

 

 

思春期は「朝が苦手」になりやすい

人にはもともと、朝から元気な「ヒバリ型」と、夕方から夜に調子が上がる「フクロウ型」の2つのタイプがあります。思春期は生理的に体内時計が後ろへずれやすく、フクロウ型になりやすい時期です。そこに自律神経の不調が重なると、「朝はどうしても起きられない」 「午前中は頭も体も動かない」 「夕方になると元気になる」という状態が起こります。本人は起きようとしているのに、身体がついてこないのです。ODはここを理解することが大切です。

 

「怠けている」と思わないでください

ODで特につらいのが、夕方には元気になるために、周囲から「怠けている」「学校を休みたいだけ」と誤解されてしまうことです。本人も「学校へ行かなければ」「朝起きなければ」と分かっています。それでも身体が思うように動きません。そこで叱られ続ければストレスが加わり、症状がさらに悪化していきます。まず周囲が、「怠けではなく、身体の調節がうまくいっていないんだ」と理解すること。これは薬よりも大切なことだと考えています。

 

「めまいの漢方薬」苓桂朮甘湯

ODに使う代表的な漢方薬が、苓桂朮甘湯です。これは元々めまい、ふらつき、立ちくらみ、動悸など使われるお薬です。漢方では体内の「水」のバランスが崩れた状態を「水毒(すいどく)」と呼び、余分な水分が偏ることで、めまいや頭重感、ふらつきが起こると考えます。苓桂朮甘湯は、この水毒を改善するお薬です。胃の辺りを叩くとチャポチャポと音がする(胃内停水)、おへその上を触るとドキドキ拍動を触れる(臍上悸)の両方があればほぼ奏功すると言われています。

 

ただしODにはいくつかのタイプがあり、すべてのお子さんに同じ漢方薬が合うわけではありません。症状や体質によっては別の漢方薬や西洋薬を選ぶこともありますし、水分・塩分摂取、生活リズム、運動といった工夫も欠かせません。

 

焦らず、少しずつ整えていきましょう

ODは思春期に多く、成長とともに改善していくお子さんも少なくありません。朝起きられないお子さんを、「怠けている」 「夜更かしするからだ」 「気合いが足りない」と責める前に、一度身体の側から原因を考えてみてください。適切な治療と周囲の理解で、焦らず少しずつ朝のつらさを整えていきましょう。

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コラム執筆

更水医院院長 清水慎介

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