診察室に入って3分で見抜いた「治る認知症」の正体とは?

認知症

2026.07.01

今回は、「認知症だと思われていた方が、実は手術で改善が期待できる病気だった」というお話です。

 

先日、ある高齢の女性がご家族に付き添われて診察室にいらっしゃいました。扉を開けて入ってきたその瞬間、私の頭にひとつの病名が浮かびました。足を左右に大きく広げ、すり足で小刻みに歩く。私たちが「ワイドベース小刻み歩行」と呼ぶ、非常に特徴的な歩き方でした。

 

患者さんの歩行の様子

ご家族も気づいていなかった「3つのサイン」

ご家族に経過をうかがうと、高血圧や脂質異常症で他院に通院されているとのことでした。ところがここ1年ほどで急に物忘れが目立つようになり、自分で薬の管理ができなくなってしまったといいます。歩行も不安定になり、さらに、「実は最近、尿失禁も出てきてオムツをしているんです」とお話しくださいました。

 

下記は、特発性正常圧水頭症(iNPH)という病気にみられる典型的な三徴(3大症状)です。

・歩行障害(足が上がりにくい、スタンスの広い小刻み歩行)
・認知機能の低下(急な物忘れや意欲の低下)
・尿失禁(トイレが間に合わない)

 
 

CTを撮る前に「水頭症かもしれません」とお伝えした理由

問診を始めてから数分後、私はご家族にこうお伝えしました。

「これは水頭症の可能性が高いと思います」

その後に行ったCT検査は、予想どおりの結果でした。脳の中で脳脊髄液がたまる「脳室」が大きく広がり、特発性正常圧水頭症に特徴的な所見が確認されました。診察室に入ってから診断の見通しが立つまで、3分とかかりませんでした。もちろん最終的な診断には画像検査が必要ですが、患者さんの歩き方やご家族のお話の中に、すでに重要なヒントが隠されていたのです。

 
 

「改善が期待できる認知症」という希望

「水頭症」と聞くと、重い病気を想像されるかもしれません。しかし特発性正常圧水頭症は、認知機能の低下をきたす病気のなかでは数少ない、外科治療で改善する方が多い疾患です。脳の中にたまった脳脊髄液をお腹へ流す「シャント手術」を行うことで、歩行障害などの症状の改善が期待できます。

 

認知機能や排尿症状が良くなる方も少なくありません。この患者さんも長野市内の脳神経外科へご紹介し、現在、手術に向けた準備が進んでいます。もしあのまま「年のせいだから仕方ない」と考えていたら、おそらく歩行障害はさらに進行し、生活の質も大きく低下していたことでしょう。正しい診断によって、再び自分の足で歩き、自分らしい生活を取り戻せる可能性があるのです。

 
 

ご家族のみなさまへ

「最近、急に歩き方がおかしくなった」「物忘れが増えてきた」「トイレの失敗が目立つようになった」

 

そんな変化を感じておられる方は、どうか「年のせい」と決めつけないでください。当院では、診察室に入ってこられるその一歩から患者さんを観察し、病気のサインを見逃さないよう心がけています。

 

ご本人やご家族が気づいていない病気のヒントが、何気ない歩き方やしぐさの中に隠れていることもあります。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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コラム執筆

更水医院院長 清水慎介

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