危険なのはどっち?「下痢」で受診した2人の患者さん

内視鏡検査

2026.10.07

今回は、実際の診療でよく出会うケースをもとにしたクイズです。お二人とも「少量の下痢を何度も繰り返す」という症状で来院されました。みなさんはどちらがより危険で急を要する状態だと思いますか。

 

患者さんA

もともと便秘がちな方です。ある日突然お腹が痛くなり、それから少量の下痢を何度も繰り返すようになりました。しかも真っ赤な血便も出ています。お腹を押すと、下腹部にはっきりとした痛みがありました。

 

患者さんB

これまでは毎日ほぼ普通に便が出ていた方です。ところが2週間ほど前から急に便秘になり、市販の下剤を飲んでみたところ、今度は少量の下痢が何度も出るようになりました。お腹は少し張っているものの、押しても痛みはありません。

 

血便もあって痛みも強いAさんの方が重症に見えるかもしれませんが、私が問診で危険性を察知して、実際により急を要する状態だったのはBさんでした。検査をしてみると、S状結腸がんで腸が狭くなり、腸閉塞の一歩手前という状態だったのです。一方のAさんは、典型的な虚血性大腸炎でした。便秘などをきっかけに大腸への血流が一時的に悪くなり、突然の腹痛のあとに下痢や鮮血便が出る病気で、重症でなければ腸を休めることで自然に良くなっていくことが多い良性疾患です。

 

ここで知っておいていただきたいのは、腸閉塞に近い状態でも、狭くなった部分を少量の便や液体だけがすり抜けて、かえって「少しずつ何度も下痢が出る」ことがあるという点です。下痢が出ているからといって、腸がきちんと通っているとは限りません。Bさんの場合、特に注目すべきだったのは「今まで普通だった便通が、2週間前から急に変わった」という経過でした。

 

私たち消化器内科医が診察室で知りたいのは、「下痢です」というひと言だけではありません。普段の便通はどうだったか、いつからどう変わったのか、回数や量は多いのか少ないのか、吐き気や腹痛や血便はあるか。このように詳しくお聞きすることで、検査の前に病気の見当がついてきます。もちろん最終的な診断にはCTや大腸内視鏡が必要ですが、問診と診察でまず疾患を思い浮かべ、それを検査で確かめる。これが診療の基本的な流れです。

 

「いつも便秘だから今回もそうだろう」「下痢が出ているから詰まってはいないだろう」こうした思い込みが、大事な病気のサインを見逃す原因になることがあります。大切なのは症状の派手さではなく、「いつもと違う変化」があるかどうかです。便通の様子がここ最近急に変わったという方は、ぜひ一度当院にご相談ください。

コラム執筆

更水医院院長 清水慎介

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