親が大腸がんでした。私も大腸がんになるでしょうか?
2026.10.15
「親が大腸がんでした。私も大腸がんになるでしょうか?」

診察室で、ときどき聞かれる質問です。結論から言うと、大腸がんの一部は遺伝します。ただ、大腸がんの大半は遺伝が原因ではありません。それでも、家族に大腸がんの方がいるかどうかは、とても大事な情報です。
■ 遺伝が明らかな大腸がんは、約5%
大腸癌研究会の「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024年版」によると、原因となる遺伝子の異常がはっきりしている「遺伝性大腸がん」は、大腸がん全体の約5%です。代表は「リンチ症候群」と「家族性大腸腺腫症(FAP)」です。
逆に言うと、大腸がんになった方の大半は、親からがんの遺伝子を受け継いだわけではありません。
■ 「家族にも大腸がん」の人は、20〜30%
一方で、大腸がんの患者さんの20〜30%では、血縁者にも大腸がんがみられます。遺伝子がまだ特定できていない体質に加えて、食事、肥満、運動不足、喫煙、飲酒といった、家族で似やすい生活習慣が影響していると考えられます。
■ 親・兄弟姉妹・子どもに患者さんがいると、リスクは上がる
親、兄弟姉妹、子どもは、遺伝子の約半分を共有しており、医学界ではこの範囲を「第一度近親者」と呼びます。第一度近親者に大腸がんの方がいると、いない人に比べて、大腸がんになるリスクはおよそ1.5〜2倍です。
さらに第一度近親者に大腸がんが2人以上いる場合や、若くして発症した方がいる場合は、さらに高くなります。
2025年には、75の研究・約93万人をまとめた解析も発表されました。第一度近親者に大腸がんの方がいる人は、前がん病変である腺腫が1.67倍、進行した腺腫が1.66倍、進行大腸がんが1.58倍多いという結果です。
大事なのは、がんになってからではなく、ポリープのうちに大腸カメラで見つけて取ることです。
■ 気をつけたいリンチ症候群
遺伝性大腸がんのなかで最も多いのがリンチ症候群で、大腸がん全体の約3%を占めます。MLH1、MSH2、MSH6、PMS2といった、DNAの傷を直す遺伝子に生まれつき異常があり、若い年齢で大腸がんを発症しやすいのが特徴です。子宮内膜がん、卵巣がん、胃がん、尿路のがんなどが、家族に多く見られることもあります。
最新のガイドラインでは、どの遺伝子に異常があるかで、大腸がんのなりやすさがかなり違うことも分かってきました。80歳までに大腸がんを発症する割合は、MLH1で46〜61%、PMS2では8.7〜20%程度です。そのため今は、遺伝子ごとに検査を始める年齢や間隔を変える方向に進んでいます。
■ こんな家族歴があれば、一度ご相談ください
これらに当てはまる場合は、一般の方より早く、大腸カメラを受けたほうが良いでしょう。海外のガイドラインでは、40歳か、家族が診断された年齢の10年前のどちらか早いほうから始めるのが一つの目安とされています。たとえば親が45歳で大腸がんになったなら、35歳ごろからです。
ただし、これは海外の家族歴をもとにした目安で、日本の大腸がん検診の決まりとは違います。家族歴の中身によってリスクは大きく変わるので、一人ひとりご相談して決めることになります。
■ 家族歴は、予防に使える情報です
大腸がんの多くは、いきなりがんができるのではなく、大腸ポリープ(腺腫)を経て発生します。家族歴を知っていて、適切な時期に大腸カメラを受ければ、ポリープの段階で切除でき、がんそのものを防げる可能性があります。
「うちは大腸がんの家系だから怖い」と思うより、「分かっているから、早めに検査を受けて大腸がんを防ぐ」と考えていただければと思います。
もしご家族に大腸がんになった方がいたら、まず「何歳のときだったか」を聞いてみてください。その年齢が、大腸カメラを始める時期を考える手がかりになります。
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